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雨の中の白根三山縦走 雷鳥と初遭遇 北岳・間ノ岳・農鳥岳

2020/05/03
 
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2017年8月16日~17日。行ってきました、憧れの白根三山縦走。標高3000mの日本一高い稜線を歩く山道。雷鳥との遭遇。
稜線から眺める絶景に思いを馳せながら毎日天気とらすの北岳天気予報と睨めっこ。天気予報での天候は芳しくなく、数日前から定期的に変わる天気予報に一喜一憂をしながら決行日を迎えたのでした。
16日の天気とらす予報では北岳登山指数B。やや登山に適していませんの予報。天気はほぼくもりで昼過ぎに雨が降るとの予報でした。
翌日は登山指数C。登山に適していませんの予報。
ちょっとまずいかも・・・と思いましたがこの天気予報なら北岳までは行けるだろうと踏んで予定通り登山を決行することにしました。
おそらくこの日を逃すと今年は白根三山縦走をするチャンスはないので、なんとか挑戦をしたいという思いからでした。
しかし、行きたいばかりでは危険なので、天候によって3パターンの計画を立てておりました。
【計画1】
1日目 広河原⇒白根御池小屋⇒大樺沢二俣⇒肩の小屋⇒北岳⇒北岳山荘(宿泊)
2日目 北岳山荘⇒間ノ岳⇒農鳥小屋⇒農鳥岳⇒大門沢降下点⇒大門沢小屋⇒奈良田
【計画2】
1日目 広河原⇒白根御池小屋⇒大樺沢二俣⇒肩の小屋⇒北岳⇒北岳山荘(宿泊)
2日目 北岳山荘⇒間ノ岳⇒北岳山荘⇒八本歯のコル⇒広河原
【計画3】
1日目 広河原⇒白根御池小屋⇒大樺沢二俣⇒肩の小屋(宿泊)
2日目 肩の小屋⇒北岳⇒来た道をピストン。天候がよければ間ノ岳⇒北岳山荘⇒八本歯のコル⇒広河原
天候を見ながらどこで引き返すかをきちんと判断できるかがポイントでした。
行きたい気持ちを抑えて引き返す事がきちんとできるか。難しいですがこれが出来なければこれからも山を登り続けていくのは危険ですね。
撤退が必要な時は「山は逃げない」と念仏のように繰り返し唱えながら下山路に向おうと考えておりました。

コース概要

奈良田まで自家用車。奈良田バス停から広河原インフォメーションセンターまで山梨交通バスで移動しました。運賃は1030円+利用協力金100円で1130円。
駐車場は奈良田バス停横の第一駐車場(20台位可)と500m先に行ったところにある第二駐車場(100台位入りそう)があります。第二駐車場にもバスが停まりますが、混雑期は奈良田バス停で満員になる可能性もあるかと思います。状況によっては第二駐車場に駐車後、歩いてバス停まで戻った方が良いこともあるかもしれません。
私は15日23:00くらいに奈良田に着きましたが、第一駐車場が空いておりましたのでそのまま駐車しました。
始発の5:30では天候が悪いためだと思いますが、第二駐車場から乗る人を合わせても満員にはなりませんでした。
バスは広河原までの区間であれば申告した場所で停まってくれるようです。
16日は広河原インフォメーションセンターに着いた途端に雨が降り始め、北岳山荘手前まではずっと雨。
17日も出発時は小雨が降っておりましたが雨が止み、なんとか当初の計画通り縦走をすることが出来ました。

コース地図

コースタイム

【一日目】
広河原インフォメーションセンター⇒16分⇒広河原・吊り橋分岐⇒6分⇒広河原山荘⇒8分⇒白根御池分岐⇒118分⇒白根御池小屋⇒21分⇒大樺沢二俣⇒97分⇒草すべり分岐⇒10分⇒小太郎尾根分岐⇒31分⇒北岳肩ノ小屋⇒13分⇒両俣分岐⇒19分⇒北岳⇒17分⇒吊尾根分岐⇒14分⇒トラバースルート分岐⇒19分⇒北岳山荘泊
【二日目】
北岳山荘⇒30分⇒中白根山⇒51分⇒間ノ岳⇒49分⇒農鳥小屋⇒56分⇒西農鳥岳⇒31分⇒農鳥岳⇒30分⇒大門沢分岐⇒104分⇒大門沢小屋⇒132分⇒奈良田ゲート⇒14分⇒奈良田駐車場⇒8分⇒奈良田バス停

登山データ

出発時刻/高度: 06:37 / 1525m
到着時刻/高度: 14:54 / 829m
合計時間: 32時間16分
合計距離: 29.31km
最高点の標高: 3170m
最低点の標高: 822m
累積標高(上り): 2600m
累積標高(下り): 3298m
荷物重量 : MAX13.5kg
消費カロリー : 9,150kcal
ログ : GARMIN62S
撮影 :  Nikon1 J4 1NIKKOR10-30mmF3.5-5.6VR 1NIKKOR30-110mmF3.8-5.6VR

登山レポート

バスを降りると広河原インフォメーションセンターがあります。非常に綺麗な設備で登山準備やトイレが快適にできます。2Fで登山届を出してから出発しました。窓口の方からは遭難が増えているので浮石等注意して歩いてとアドバイスをいただきました。

広河原インフォメーションセンター

広河原インフォメーションセンター

広河原インフォメーションセンターから北上すると数分でコース概要が書かれた大きな看板があります。看板の左手に広河原山荘へのつり橋に降りる道があります。
私が通った時は丁度団体さんが看板の周りを囲んでいて、ガイドさんの説明を聞いていました。人の向こうにあるつり橋への降り口に気が付かず、そのまま白鳳峠入口の近くまで歩いて行ってしまい、気が付いてから慌てて戻りました。
つり橋への降り口は知らないとちょっとわかりにくい場合がありますので注意です。

広河原山荘へのつり橋

広河原山荘へのつり橋

広河原山荘にはテント場があります。ここにテントを張って北岳をピストンする方もいらっしゃいます。しっかりしたトイレ有、自販機ありでテン泊しやすいですね。

広河原山荘

広河原山荘

広河原山荘から少し進んだところに白根御池小屋と大樺沢の分岐があります。今回は白根御池小屋経由で登りました。標高差700mの尾根道をひたすら直登します。結構しんどいですが、途中に2カ所休憩用ベンチが設けられておりますので、これを目標に休憩をするとよいかと思います。トラバース路に入れば白根御池小屋までもう少しです。

白根御池小屋

白根御池小屋

白根御池小屋は非常に綺麗な小屋で、名物はアイスクリームだそうです。生憎の天気だったのでアイスクリームを食べる気にはなりませんでした。水は無料で入口の左手にある蛇口から汲むことができます。丁度ペットボトル500ml分の水がなくなったので、南アルプスのおいしい水をいただきました。
ここからのルートは小太郎尾根へ直登する草スベリルート。大樺沢へ戻るルートがあります。草スベリルートは急登で虫も多いと聞いていたので、今回は大樺沢ルートへ戻り、大樺沢二俣より小太郎尾根を目指すルートを選びました。少し遠回りですがこちらの方が楽そうです。

大樺沢二俣から見た雪渓

大樺沢二俣から見た雪渓

この時は小雨でしたが、上は雲でほとんど見えませんでした。
肩の小屋方面へのルートは、しばらくは雪渓を左に見ながら登っていき、次第に離れていきます。途中にお花畑もありなかなか歩きやすいコースでした。ただし、こちらもそれなりに急登で楽ではありませんでした。草スベリ分岐近くに休憩ベンチがありますので、まずはここを目指しましょう。草スベリ分岐から稜線までは10分程度です。

 

お花畑

お花畑

肩の小屋へ向かう稜線

肩の小屋へ向かう稜線

小太郎尾根分岐から肩の小屋までのルートはなだらかな稜線沿いを歩く道です。天気が良ければ開放的で気持ちがよいと思うのですが、今回は真っ白で何も見えず。
稜線に出ると風が強くなるので、汗で服が濡れてしまっているときは注意が必要です。一気に体が冷えて夏でも低体温症になる可能性があります。今回はずっとレインウェアを着ていたので、蒸れてベタベタの状態でした。
手も雨でふやけていたのですが、しばらく稜線を歩いていたら右人差し指の感覚がなくなってきて、体も冷やされてきてちょっと危険を感じましたがなんとか肩の小屋に到着。

肩の小屋

肩の小屋

何か購入してから建物に入って休憩をとなっておりましたので、コーラを購入。休憩のみの場合は荷物は建物の中に入れられないとの事で、表のパレットに荷物を置いて小屋の中へ。小屋の中はdocomoが通じますし、テレビで高校野球の観戦も出来るという標高3000mにある小屋とは思えない環境でした。奥では宿泊の方がストーブに当たっておりました。
小屋の中でコーラを飲みながら高校野球を観戦すること20分。ベタベタの襟付きシャツを脱いでソフトシェルに着替え、レインウェアを着て出発。雨は小屋に着いた時よりさらに強くなり、一瞬第三計画が頭を過りましたが、体が煽られるほど風が強いわけではなかったので山頂に向けて歩き始めました。
ソフトシェルの上にレインウェアを着ているので、風も全く通さず体温も奪われず快適な状態で登れました。レイアリングは大事ですね。
山頂に到着すると誰もおらず、独り占めでした。何も見えない一面真っ白な山頂で一人自撮りというのはさみしいものです。

北岳山頂

北岳山頂

さっさと山頂を降りて北岳山荘を目指しました。山頂を降りてしばらくすると次第に雨が弱まり、北岳山荘が見えてきたころには雨が止みました。雲も時々切れて稜線が見えるように。やっと南アルプスらしい景色を見ることが出来ました。

北岳山荘

北岳山荘

北岳山荘は肩の小屋より大きく、かなりの人数を収容することができます。この日は悪天候でしたが団体さんが来ていたので40~50名程泊まられていたと思います。
小屋の入り口に入ると土間があり、正面棚に記入票が置いてあります。それを記入してから引き戸を開けて入るとカウンターがあります。ここで料金を支払うと食事券と部屋割票をいただけます。
土間の左手には乾燥室がありますので、濡れた服や靴を乾かすことができますが、あまり温度が高くないので正直あまり乾きませんでした。
20時までしか使えない事と、部屋でも服を吊るスペースがありますので、水が滴らない状態なら部屋干しの方がよいかもしれません。
小屋の中は暖房が効いているようで暖かく、部屋は小綺麗で快適でした。
窓を開けると雲海の向こうに富士山を眺めることができます。
ヘリの音が聞こえてきたので窓を開けて見ていたら、従業員の方に注意を受けました。ヘリが来ているときは危険なので窓を開けないようにとのことです。言われてみればその通りですね。

ヘリと富士山 山荘の窓から

ヘリと富士山 山荘の窓から

やっと雲が晴れたので、外に出て景色を眺めました。晴れていれば夕焼けが雲を朱に染めて綺麗だった事でしょう。

富士を眺める人たち

富士を眺める人たち

テントから雲海を眺める

テントから雲海を眺める

山荘前で夕焼けを待つ

山荘前で夕焼けを待つ

山荘の夕食は美味しかったです。ご飯はお替り自由。山関連の本がたくさん置いてありますので、食事前後は雑誌を読んでくつろげました。今回は一人一つ布団がありましたので快適でした。人が多いときは一枚の布団に3人寝るそうです・・・。想像しただけで恐ろしい・・・。
ここだけは天気が悪くてよかったかもしれません・・・。

部屋の中

部屋の中

次の日は4:30から朝食。5:20に出発しましたが濃霧で小雨でした。
先の見えない稜線を歩いていると、中白峰山の手前で足元に雷鳥が出現。顔を上げると雷鳥の群れが!初雷鳥が群れで見られるとはラッキーでした。脚に印が巻かれた親鳥らしき雷鳥の周りを他の雷鳥がウロウロしていました。
雷鳥はひよこみたいな鳴き声をするんですね。まったく警戒心がなく、向こうからこちらに寄ってくるのでたくさん写真を撮れました。

こちらに歩み寄ってくる雷鳥の群れ

こちらに歩み寄ってくる雷鳥の群れ

雷鳥の食事

雷鳥の食事

雷鳥の群れを見て気力充填。間ノ岳、農鳥岳を目指します。
雲中の標高3000m稜線をひた歩きます。山道は明瞭で印もしっかりありますので、よほどの濃霧でなければ迷うことはないと思います。しかし、ずっとガレ場で岩を登る場面もあり、浮石も多いので足元を注意して歩く必要があります。危険なところは基本的にあまりありませんが、滑落すればまず助からないところはたくさんありますので油断しないで歩く必要があります。
農鳥岳まで終始雲の中でたまに雲が切れて少し景色が見える状態でした。
晴れていればそれは美しい景色が見られただろうなと思います。

一瞬現れた日の光が雲を照らして現れた虹

一瞬現れた日の光が雲を照らして現れた虹

農鳥小屋を出発する登山者

農鳥小屋を出発する登山者

農鳥小屋を見返す

農鳥小屋を見返す

雲中の山道

雲の中の山道

農鳥岳山頂への道

農鳥岳山頂への道

農鳥岳を超えると、大門沢降下点まで降りていきます。降下点には目印の鐘があります。昔ここで遭難して亡くなられた方の家族が再び同じことが起こらないようにとの思いで建てたものだそうです。現在は多くの登山者の休憩ポイントになっております。

降下点へ向かう稜線

降下点へ向かう稜線

降下点で休憩をする登山者

降下点で休憩をする登山者

降下点から奈良田へ降ります。ここからが今回のコースの核心部です。
山道は明瞭で印もしっかりあるので道迷いはほぼないと思いますが、一部山道が荒れているところがあります。
山道の崩落、渡渉箇所の橋の破損、山道の川化、トラバース路等足を滑らせると命がないと思わせるところが多数ありました。
奈良田への道は標高差2000mを降りる長い道です。集中力を切らさないようにする必要があります。
途中の大門沢小屋でしっかり休みましょう。

崩落した山道

崩落した山道

真っ二つの渡渉用梯子

真っ二つの渡渉用梯子

川と化す山道

川と化す山道

個人的に一番危険を感じたのは、真っ二つになった梯子の渡渉とかなり下に降りたところの(標高1300mくらいのところ)トラバース路です。
この日は水量が多く、沢に落ちたらまず助からないだろうと思われるほど勢いよく大量の水が流れておりました。渡渉箇所は5,6カ所はあったと思います。最後の渡渉は橋がないので、渡れるところを探して渡る感じです。
怖かったトラバース路は、平らなところから一気に降りる道ですが、掴むロープはあるものの足を滑らせると谷底へ一直線という道でした。高いところが苦手な私はここが一番嫌なところでした。

最後の橋のない渡渉を越えてちょっと歩くと水門とつり橋が現れます。このつり橋は結構ねじれながら揺れるので怖いので慎重に。ここを渡れば人界へ生還です。

人界へのつり橋

人界へのつり橋

工事中の砂防ダム

工事中の砂防ダム

後は工事現場を通って林道を降りると道に出ます。ここまで来ればバス停まで20分です。

天気には恵まれませんでしたが、雨の日の山行は非常に良い経験になりました。
レイアリングの重要性の再確認、低体温症になる条件の体験、山小屋泊での必要・不要な装備等。
今度は快晴の下でこの稜線を歩きたいですね。夜は山小屋から満天の星空を眺めたいものです。また来年来たいと思います。

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