富士山と天の川を撮影に三ツ峠山へナイトハイク
目次
清八林道口から三ツ峠山へ
三ツ峠山への登山口はいくつかあるが、一番手軽に登れるのがこの登山口だ。国道137号線から新御坂トンネル手前を右に入った御坂みちの途中にある清八林道と西川新倉林道の合流点にある登山口。
標高差は440m程度で、山頂下にある山小屋へ車でアクセスできる林道(とはいえ本格的な四駆が必要で一般車進入禁止)を登るので、道迷いすることなく安全に登れるルート。この季節は日の出が早いので、短時間で登れるこのルートはありがたい。
日の出予定時刻は4:20くらいなので、天の川が撮れるのは3:30くらいまでか。撮影時間はそれなりに欲しいし、星空以外も撮りたいので2:00までに到着出来るように0:30くらいから登り始める予定で駐車場に到着。
駐車場に到着すると、駐車スペースにテントが2張…。人が来ないこの時間ならまだしも、明け方になったら迷惑では…と思いつつ空いているスペースに駐車した。
空を見上げると、木の枝の隙間から零れんばかりの星空が見えた。SCWの天気予報では微妙だったが問題ないようだ。
「これは大勝利だ!」
などと思いつつウキウキしながらヘッデンの明かりを頼りに登山道を登って行った。
三ツ峠山山頂に着くと・・・
暗闇の森に時々光る金色の双眼。シカさんである。鹿の姿が見えたり、光る眼しか見えなかったりだったが、今晩は5頭と遭遇。シカやタヌキ等は遭っても概ね無害だが、熊やイノシシには遭いたくないので熊鈴はガンガン鳴らしながら歩く。登りで体の動きが緩慢になると鈴も鳴りにくくなるので、そんな時は自らの手で揺らして鳴らす。
いつも思うが、体の揺れに関係なく一定間隔で鈴の音が鳴る電子式熊鈴があればよいのにと思う。3,000円くらいであれば速攻で買うのだが。
中間地点となる休憩ベンチのある場所に来ると、あたりが霧に包まれた。駐車場では晴天だったからちょっと雲に入ったのだろうか。
「これは雲海も期待できる・・・。」
頭の中で雲海に浮かぶ富士山と天の川の妄想を膨らませながらさらに登り進めた。
そして登山口から登り始めること1時間。三ツ峠山山頂に到着。山頂への階段を登りきると、強い風と濃い霧。5m先にあるはずの山頂標識すらほとんど見えない濃霧。
「これは大勝利どころか大惨敗ではないのか…。」
取りあえず雲が切れているところがないか探しに四季楽園と三ツ峠山荘近くまで降りて彷徨う。
「雲の切れ目どころか足元しか見えねぇ。」
知らない登山道なら間違いなく遭難するレベルの濃霧だった。
それでも天は見捨てなかった…
彷徨っても仕方がないので、山頂へ向かう階段で風がよけられるところで待機することにした。廃業した山小屋(富士見山荘だったか?)のちょっと上あたりで休憩する。脇には三ツ峠山の撮影スポットで定番の崖があるが、鉄網の板で封鎖されていた。誰か落ちたのだろうか。
暇つぶしに身の回りにある葉っぱなどを撮っていると、山小屋方面からヘッデンの光が一つ上がってくる。
「こんなガスガスの中で登って来るとは物好きな・・・。」
自分のことは棚に上げつつそんなことを思いながらその場で待つ。50代前半くらいだろうか。割と年配の男性が挨拶もそこそこにしてハイペースで上がっていった。
男性が上がって行ってから数分後。急に雲が晴れて星空が現れた。
「山頂に急がねば!」
男性の後を追って山頂へ急いで登った。山頂直下の反射板あたりで男性のヘッデンの明かりが一瞬見えたがすぐにどこかに行ってしまった。御巣鷹山方面へ行かれたようだ。
山頂に着くと雲が飛んで満天の星空が見える。ヘッデンの明かりを消すと闇の向こうに富士山の影もうかがえた。
急いで三脚を用意してカメラをセットする。ちょうど富士山の上に強く輝く星が見える。多分土星か何かだろう。レンズの手振れ補正とオートフォーカスをOFFに。マニュアルでその強く輝く星にピンを合わせてからレンズを大雑把に富士山に向けてISO51200で撮影。とれた写真から構図を詰めていく。
構図が決まったら本番撮影。私の場合、星空撮影はいつもSS20秒、F2.8、ISO3200でスタートする。
撮影準備している最中も、雲が流れてきて富士山が見え隠れする。いつまで撮れるかわからない状況。雲が切れて富士山が現れてるタイミングで少しずつ構図を変えながら撮影していく。
結局15分ほどの間で10枚程度撮れたのみだった。富士山が見えていたのは正味10分弱か。午前3時過ぎに再び雲に飲まれた富士山と天の川は、陽が昇るまで現れることはなかった。
しかし、この天候でしっかりとれるチャンスがあったのだからむしろラッキーだったと言えるだろう。
夜明けを迎えて
午前4時前になるとあたりはかなり明るくなってくる。日の出予定時刻は4:21。日の出前の朝焼けを楽しめる時刻である。
晴れていれば三ツ峠山山頂から北に目を向けると八ヶ岳や南アルプスが望め、東の眺望は大月市や相模原市の街と高尾山系が見える。天気次第ではスカイツリーも見える。
日の出が近づくにつれて東の空を覆っていた雲が切れ始め、眼下の街を覆う雲海と丹沢山塊が見え始めた。
日の出前に赤く染まる空と丹沢山塊。雲海の切れ間から見える街の灯り。やっぱり山で迎える朝の景色は最高である。しかし…
「正直言って暗闇の中、山を登るのは怖い。」
なのだが、山で迎える朝の光景は病みつきになる。今後も無事にナイトハイクが出来るよう切に願う。
これまた雲で見え隠れしながらの撮影になったが、日の出を前にして山頂は完全に雲に飲まれてしまい、周辺は霧に包まれてしまった。
御巣鷹山から清八山、本社ヶ丸へ
日の出の時間が過ぎても雲が切れるのを期待して待ってみたが、残念ながら天候が回復することはなかった。南アルプス、八ヶ岳も見えない。諦めて山頂を降りた。
わざわざここまで来て、このまま同じ道を戻るのももったいない。登山計画にはあらかじめ清八山と本社ヶ丸も寄っていくコースで申請しておいた。登山において計画外のところを歩くのはなるべく避けたい。もしものことがあった場合、探索しづらくなる。
私の場合、ココヘリを持っているので最悪、谷底にでも滑落して死んでしまっていてもおそらく遺体は発見してもらえるだろう…。縁起でもないが。
とにかく、きちんと登山計画を提出して家族には周知しておくことが大事。近年はネットであらかじめ提出できるので便利だ。登山ポストは個人情報漏洩の心配もあるのであまり使いたくないしね。
そんなわけで、霧に煙る雑木林の中を御巣鷹山へ向けて歩いていく。霧越しに朝日が輝いて、雑木林を金色に染める。これはこれでいい感じ。
御巣鷹山山頂直下から振り返ると、雲が切れて開運山と富士山が見えた。これから天気が回復しそう。しかし、残念ながら御巣鷹山から清八山までのルートはほとんど眺望がないので晴天の風景を楽しむことが出来ない。天気が良いうちに清八山に着きたいものだ。
御巣鷹山からの下りは一気に300mほど下りかなり急。日も当たらないジメっとした森を歩くのであまり見るべきところもない。足元に気を付けながらゆっくり下る。
しばらく下っていくと森が霧に包まれる。雲の残りがかかっているようだ。日の光が霧に差して光芒が森にそそぐ。霧の森はいいものだ。
霧がディフューザーのようになって森の中に柔らかい光を注いでいて綺麗。こういう霧なら大歓迎なんだけどね。
清八山に行くまでに超えるピークは4,5つあるが、名前が付いているのは茶臼山、大幡山、ヤナ沢の頭の三つ。それぞれちょっとしたピークなのでこの区間はさほどきつくない。逆向きに歩いていれば御巣鷹山への登りがかなりしんどいが。
この区間で唯一眺望を楽しめるのは大幡山とヤナ沢の頭の中間にある鉄塔だ。特になじみのある山が見えるわけではないが、開放的で眺めがよい。休憩するにはちょうど良いところだ。
鉄塔からヤナ沢の頭への登り返しの途中で木々の向こうに富士山を望むことが出来る。秀麗富嶽十二景の一つである清八山もかなり近づいているので、富士山が見えてちょっと気力が回復する場所だ。
ヤナ沢の頭を越えると大幡八丁峠と呼ばれる駐車場方面と清八山方面の分岐点に着く。ここから駐車場へのルートは車も通れる(ゲートが閉まっていて侵入は出来ないが)くらいのしっかりした林道だ。清八山へはあと120m程登ることになる。
清八山までのルートは階段も作られたしっかりしたルートなので安心して登れる。山頂直下にちょっとした岩登りがあるがご愛敬だ。大幡八丁峠から清八山まで20分弱で到着した。
清八山は秀麗富嶽十二景の一つで富士山が綺麗に見える山だ。ほかにも奥秩父や八ヶ岳、南アルプスも一望できる好展望地。ただ、今回はちょっと休んですぐに本社ヶ丸に移動した。本社ヶ丸は全開訪問したときはガスで全く眺望が効かなかったので、天気が良いうちに到着したかったからである。
本社ヶ丸までのルートは先ほどとは打って変わっていくつもの小ピークと岩登りの連続。危険な場所はあまりないが、偽ピークがずっと続くので精神的に意外と疲れる。偽ピークだらけだと知らずに歩くと結構疲れるだろう。ただしそれらのピークからの眺望もよいところがある。
清八山から30分ほどで本社ヶ丸に到着した。
ここも概ね周囲一帯を見渡せる好展望地。山頂は狭く数人で一杯になるが、そもそもマイナーな山なのであまり人も来ない。ここも秀麗富嶽十二景の一つだが、ここからの富士山は特に格好よく見えない。
奥秩父や八ヶ岳は雲の中でほとんど見えなかったが、南アルプスはよく見えた。この日に南アルプスに行った人は大いに景色を楽しめただろう。
後から山頂に来たおじさんと話し込み、本社ヶ丸に一時間近く滞在してしまった。その後大幡八丁峠から林道を通って下山。コロナ自粛明けの足慣らしにはちょうど良い山行だった。
三ツ峠をナイトハイクの動画
動画でもまとめてみました。ナイトハイクの雰囲気を見てもらえると思います。あと、霧の森に差す光芒もいい感じでした。
コース
駐車場・登山口
国道137号線を富士吉田市から笛吹市方面へ北上。新御坂トンネル手前の右手にある御坂みちへ右折。どんどん進んでいくと三つ峠登山口の標識が右手に現れる。さらに奥に進んでいくと駐車場がある。
登山客の多い山なので、奥の駐車場はすぐに満車になる。登山口標識付近にも駐車スペースがあるが路駐も多い。夜明けの時間あたりには到着することをお勧めします。
ルート地図
ルートタイム
【登山口⇒三ツ峠山】 山行時間:63分(休憩なし)
駐車場⇒56分⇒四季楽園⇒7分⇒三ッ峠山
【三ツ峠山⇒清八山⇒本社ヶ丸】 山行時間161分(休憩含まず)
三ッ峠山⇒7分⇒四季楽園トイレ⇒23分⇒御巣鷹山⇒46分⇒茶臼山⇒15分⇒大幡山⇒20分⇒ヤナ沢の頭⇒3分⇒大幡八丁峠⇒19分⇒清八山⇒4分⇒清八峠⇒24分⇒本社ヶ丸
【本社ヶ丸⇒駐車場】 山行時間63分(休憩含まず)
本社ヶ丸⇒24分⇒清八峠⇒3分⇒清八山⇒7分⇒大幡八丁峠⇒5分⇒八丁峠分岐⇒24分⇒駐車場
ルートデータ
- 出発時刻/高度: 00:34 / 1312m
- 到着時刻/高度: 10:01 / 1311m
- 合計時間: 9時間27分
- 合計距離: 13.07km
- 最高点の標高: 1763m
- 最低点の標高: 1308m
- 累積標高(上り): 772m
- 累積標高(下り): 760m
- 荷物重量 : 約13kg
- 消費カロリー : 3,340kcal
持ち物
- ザック deuterFUTURA28
- 登山靴 mont-bell タイオガブーツ
- 手袋 mont-bellフリース製
- ミドルレイヤー mont-bell Tシャツ
- ベースレイヤー mont-bellジオラインL.W.
- パンツ mont-bellサウスリムパンツ
- 靴下 mont-bell製
- GPS GARMIN62S
- ヘッドライト blackdiamond spot
- ストック メーカー不明
- カメラ Nikon Z6、Nikon1 J4
- レンズ Ai Nikkor 135mm F2、TAMRON SP24-70mmF/2.8 Di USD VC G2、1Nikkor10-30mmPD
- 三脚 マンフロットBefreeadvance、ミニ三脚 マンフロットPIXI EVO
- その他 帽子 行動食(ゼリー×3、カロリーメイト×3)飲料水1.7L(スポーツ飲料水0.5L+お茶1.2L) 救急セット 懐中電灯 予備電池 熊鈴 コンパス 地図 時計 携帯 財布 保険証 筆記用具 予備紐 ライター ビバークシート,ココヘリ発信機,PeakDesign Capturecameraclip