鈴鹿山脈最高峰、御池岳と天空の草原テーブルランドを巡る
目次
天空の草原テーブルランド
鈴鹿山脈は北は関ケ原南部にある霊仙山から南は三重県亀山市にある鈴鹿峠まで岐阜県、滋賀県、三重県の三県の県境を南北に延びる山脈。概ね標高1000m~1200m程度の比較的低山で形成されていて、霊仙山や御池岳などカルスト地形の山が多い。低山で登りやすいながら岩稜と草原の景色を楽しめるため、登山者の多い山域。日本二百名山の御在所岳や三百名山の藤原岳あたりが有名だと思う。
御池岳周辺の標高1000m域に広がる広大な平原がテールブランドと呼ばれている。カルスト地形なので、草原に石灰石の岩や多数のドリーネと呼ばれる窪みが点在する。豊かな森も形成されていて、シマリスが多数みられることでも有名。割と手軽に登れて別天地のような風景が楽しめる場所として人気の登山スポットなのである。
以前から気になっていたが、ちょうど滋賀県に行く用事が出来たのでこの機会に御池岳とテーブルランドに行ってみた。
鞍掛峠から鈴北岳をめざす
国道306号線の滋賀県と三重県の県境にある鞍掛トンネルの入り口に登山口がある。三重県側、滋賀県の両方に駐車場があるが三重県側の方が広く停めやすい。
駐車場に停めた他の人は国道を下ってコグルミ谷登山口を目指す人がほとんどのようだった。後から分かったのだが、コグルミ谷はシマリスをたくさん見ることが出来るようだった。知っていれば・・・と思ったが後の祭りである。当日は何も知らずに、駐車場の裏手にある登山口から登り始めた。
最初は九十九折れの急登。ザレ気味で下りは少し気を付けなければいけない感じ。登って行くと左手が切れ落ちていて、道も狭いので滑落注意する。登山口から20分ほどで鞍掛峠に到着した。
ここから鈴北岳までは尾根道を登って行くが、木々がまばらなところが多く眺望が良かった。三重県側のいなべ市の街が見渡せる。雲の中に見え隠れする朝日を眺めながらのんびり登る。
標高を上げていくと、あちこちに苔が群生していた。紅葉に燃える森も楽しみにしていたのだが、残念ながら少し訪れるのが遅かったようで落葉が進んで山肌を覆う木々はかなり色あせていた。そんな中で、山道に群生する苔だけが活き活きとした緑色で目を楽しませてくれた。
鈴北岳までは鞍掛峠から70分ほどかかった。割とのんびり登って来たので、健脚の人ならずっと速く登れるだろう。山頂には木々は生えておらず360度眺望が楽しめる。北には鈴鹿山脈の北端に位置する霊仙山や百名山の伊吹山が見えた。西は東近江市の街と琵琶湖。南には今回のピーク御池岳が見える。テーブルランドと言う俗称からだだっ広い草原を想像していたが、鈴北岳から見た景色は、結構深い森におおわれた丘陵という感じだった。
原生の森を歩く
鈴北岳から下に見える苔の群生地へ降りる。日本庭園と呼ばれている場所。真ん中まで来ると3方向に分岐があるが、正面の道はすぐ先に見えるドリーネに向かっていて標識もない。予定のコースは元池からお花池をまわって西のボタンブチ。まずは元池へ向かう。苔の群生地に足の幅ほどの道が出来ているので、苔を踏まないように慎重に歩いていく。ほどなくして元池に到着。その先にある丘に登ってお花池へ・・・と思ったが道がない。
事前に調べていたヤマレコのテーブルランドを周回しているレコの地図を確認。やはり道のないところを歩いて行った様子。団体さんで行動していたレコだったので普通に歩ける道だと思っていたのだが…。
カルスト地形にたくさんあるドリーネは底が空洞になっている場合があり、誤って落ちると探索困難になるので命はない。山口県の秋吉台などはたまに行方不明になる方がおられるが、大方がドリーネに落ちているのだと思われる。テーブルランドもドリーネが点在していて地下に同様の空洞がないとも限らない。
そういうわけであまり踏み跡のないところを歩く気になれないのでもと来た道を引き返した。
一旦分岐に戻りコースをちょっと検討。正面のドリーネに向かう標識のない道に行ってみる事に。この道は踏み跡が大きいので、テーブルの端に続く道なのかもしれない。数十メートル進むとドリーネ方面と西のボタンブチ方面に分かれる分岐。分岐を左に進んだが、どうもまっすぐ御池岳の方向に向かっていて道がテーブルランドの端に行く気配はない。思い切って右手にある丘陵を登って行った。足元に注意しながら登って行く。数カ所にピンクテープが付いていて、ここを上がる人はいるようだ。
西のボタンブチに上がったはずだったがよくわからない。テーブルランドの端にも道はついていなかった。ヤマレコではよく踏まれていると思っていたところだったのでちょっとびっくり。足元はシダ系の低い草で土が見えづらい。マムシがいてもわからないしそれこそドリーネの空洞があったらと思うと・・・。正直、げんなりした。
それでも、歩いている人は多いはずなので大丈夫だろうと思い慎重に進む。カレンフェルトの岩に苔が付いた森は静かできれい。森に差し込む朝日が苔の付いた岩を照らして目の前に道を示してくれているような光景に少し気緊張がほぐれた。
途中の夕日のテラスと看板が付けられた場所や、ドリーネにできた池があった。すり鉢状に綺麗にくぼんだそこに水が溜まり、周辺に苔むした木々が取り巻いている景色が少し幻想的だった。足元の様子に恐恐としながら御池岳に向かってゆっくり歩いて行った。
御池岳山頂から天空の草原を歩く
バリルートからようやく普通の山道に入り、御池岳山頂に到着。山頂は石灰岩の岩だらけのカレンフェルト。熱いコーヒーを飲みながらのんびりされている老夫婦がおられるのみで静か。山頂の周りは木々に囲まれていてあまり眺望がない。特に休憩するほど疲れてもいなかったので、山頂標識で自撮りしてからそそくさと次の予定地ボタンブチへ向かった。
山頂から南西に降りていくとすぐに視界が開け、草原が現れた。草原の中に山道が一本、崖の淵の方へ伸びている。ここに来る前に想像していたテーブルランドの景色が現れた。草原の中を歩き、天狗の鼻と呼ばれるところからボタンブチへ。ともにキレ落ちた崖の淵にある展望の良い場所。眼下には紅葉する山々が見渡せるが、ピークを過ぎてしまっているのが少々残念だった。
ボタンブチからキレ落ちた崖沿いに歩いていく。道はところどころ不明瞭になるが基本的にはきちんとついている。幸助の池を過ぎてT字尾根降下点、土倉岳降下点を経て東のボタンブチへ向かう。このあたりの風景はカルスト地形らしいカレンフェルトがならぶ広い草原だった。T字尾根降下点からは道が不明瞭になるが、基本的に崖沿いを歩けばよいので迷うことはない。
東のボタンブチからは日本三百名山の藤原岳を望むことができた。意外と近く感じる。頑張れば行って帰ってこれそうな距離感。藤原岳の三重県側ふもとは(というより中腹か)、伊吹山と同様に石灰石の採掘場になっていたと記憶している。生活に必要なものとはいえ、山容が崩れていくのは忍びない。
ここからはテーブルランドの北側をまわり、奥の平を経由して再度御池岳山頂へ向かう。奥の平まではところどころに踏み跡はあるものの基本的に山道はない。少々方向を間違えながらも進んでいく。
奥の平は御池岳山頂と並んで標高の高い場所。木がほとんど自生しておらず、見通しが良いので、テーブルランドの南側に広がる草原を一望できる。ボタンブチや天狗の鼻にたくさんの登山者が集まっているのが見えた。ちょうど昼食前の時間なので、みんな山飯の準備をしているのだろう。
下山で道を間違える
御池岳山頂に着くと、たくさんの登山者であふれていた。時間は11時過ぎ。あちこちでお湯を沸かす人がいた。ここで休憩してから降りようと思っていたが、人が多いし、たいして疲れてもいなかったのでこのまま下山することにした。
丁度下から登ってくる登山者が見えたのでそちらのほうへ降りる。これが道間違えの始まりだった。
印刷してきた国土地理院地図には山頂からのルートは3つ記されていた。ボタンブチ方面、奥の平方面、そしてコグルミ谷方面だ。
御池岳の北側へ降りるルートはコグルミ谷方面のみなので、疑いもせずに登山者が昇ってきた方向に降りてしまった。実はこれは地理院地図には記載されていないルートだったのだ。
そうとも気づかず下山。やがて分岐に差し掛かる。分岐には鈴北岳と真の谷方面の標識。この分岐がカタクリ峠の上にある分岐だと勘違いしていた。
分岐を鈴北岳へ向けて歩き出す。しばらく歩くと左に曲がりながら進む道に差し掛かり、右後方にピークが見えた。ピークには人の影が結構たくさん見える。地図を見ると1148と記載されたピークがある。余裕があるからついでに寄っておくか…。道のないところをガサガサ登る。今回の登山は道なき道ばかり歩いていたので違和感がなかった。
ピークに登頂すると、何やら見覚えのある光景。朝登ってきた鈴北岳だったのである。GPSを確認すると、御池岳山頂からの下山ルートが予定していたコースより北の斜面を下りていた。
地図を確認した位置からの登山道の形とピークの位置は1148ピークと鈴北岳はよく似ている。しかし、まわりの地形は結構違う。道の形とピークの位置ばかり目が行って、周辺の地形を地図で確認していなかった。きちんと見ていれば、地図を見た時点で間違っていたことに気が付いたはず…。そもそも、山頂から降りるときに地図できちんと方向を確認すべきだった。
今回は全く支障が出ない道間違いだったが、場所が場所なら遭難している。反省しきりの登山となったのであった。
アクセス・コース
駐車場・登山口
駐車場は3か所。鞍掛トンネルの東西入り口付近とコグルミ谷登山口。
鞍掛トンネル東側は一番開けた駐車場で、15台程度は駐車可能。下山したときは路上駐車も結構いた。国道とはいえあまり交通量の多くない道でトンネル付近は道も広い。路駐でも迷惑にはならないだろうが自己責任で。
倉掛トンネル西側はトンネル入口のすぐそば、南側に奥に向かって伸びている。駐車台数は見た感じ10台程度だろうか。出るときにトンネルを走ってくる車と接触しないように気を付けたい。
コグルミ谷の駐車場は2台程しかとまれないらしい。実際、鞍掛トンネル東からコグルミ谷方面へ国道を下りていく方をたくさん見た。コグルミ谷から鈴北岳を周回するなら鞍掛トンネルで駐車したほうがいいと思う。
ルート地図
ルートタイム
【登山口⇒鈴北岳】
鞍掛トンネル東登山口⇒18分⇒鞍掛峠⇒69分⇒鈴北岳
【鈴北岳⇒日本庭園、西のボタンブチ経由御池岳】
鈴北岳⇒10分⇒元池⇒3分⇒日本庭園⇒8分⇒西のボタンブチ⇒18分⇒丸池⇒16分⇒御池岳
※バリエーションルートです。登山道はなく踏み跡、印もほとんどないので注意が必要です。
【御池岳⇒ボタンブチ⇒東のボタンブチ⇒奥の平⇒御池岳】
御池岳⇒7分⇒風池⇒5分⇒天狗の鼻⇒3分⇒ボタンブチ⇒1分⇒幸助の池⇒9分⇒東池⇒6分⇒T字尾根・下降点⇒7分⇒土倉岳・下降点⇒13分⇒東のボタンブチ⇒17分⇒青のドリーネ⇒12分⇒奥の平⇒11分⇒御池岳
※一部バリエーションルートです。登山道がないところを歩いています。歩かれる方は注意してください。
【御池岳⇒鈴北岳⇒駐車場】
御池岳⇒15分⇒鈴北岳分岐⇒9分⇒真の池⇒10分⇒鈴北岳⇒33分⇒鞍掛峠⇒9分⇒鞍掛トンネル東登山口
ルートデータ
- 出発時刻/高度: 06:27 / 638m
- 到着時刻/高度: 12:44 / 637m
- 合計時間: 6時間17分
- 合計距離: 13.58km
- 最高点の標高: 1236m
- 最低点の標高: 621m
- 累積標高(上り): 912m
- 累積標高(下り): 919m
- 荷物重量 : MAX13kg
- 消費カロリー :3200kcal
- 消費水分 : 0.3l
- 摂取カロリー : 0kcal
持ち物
- ザック kestrel38
- 登山靴 mont-bell ツオロミブーツ
- 手袋 mont-bellシャミーズグローブ(手袋未使用)
- ウインドブレーカー mont-bellウインドブラストパーカー
- ミドルレイヤー mont-bellクリマプラス100ジャケット(未使用)
- ベースレイヤー mont-bellジオラインL.W.
- パンツ mont-bellサウスリムパンツ
- 靴下 mont-bell製
- レインウェア mont-bellレインダンサー(未着用)
- ストック メーカー不明(未使用)
- GPS GARMIN62S
- ヘッドライト blackdiamond spot
- カメラ NikonZ6 Nikon1 J4
- レンズ Nikkor Z 24-70F4S Ai Nikkor 28mmF2.8 AF Nikkor 18-35mmF3.5-4.5D 1Nikkor 30-110
- 三脚 manfrotto PIXI EVO
- その他 帽子 行動食(ゼリー×3、カロリーメイト×2)飲料水1.5L 救急セット 懐中電灯 予備電池 熊鈴 コンパス 地図 時計 携帯 財布 保険証 筆記用具 予備紐 ライター ビバークシート,NDフィルター,C-PLフィルター
- ココヘリ発信機